完璧なコティングのためのヒント
経口固形製剤の処方の決定をする際,原薬(api)及び賦形剤の特性を理解することは大変重要です。また一方で,最終製品の品質に影響を与える可能性のあるファクターは,たくさん存在しており,素錠の基材,コーティング剤の処方や製造工程などが考えられます。研究開発の初期の段階より,これらのファクターについて正しい判断を下すことで,その後のスケールアップの問題,製造販売承認の遅延や実生産時に起こり得る問題についても,リスクを軽減することが可能となります。
私たちは開発初期の段階から,効果的なコーティングの接着性は実現すべきであると,経験を通して学びました。
ヒント1:素錠に使用する滑沢剤の検討
滑沢剤は錠剤用の粉末を圧縮する際に,打錠機臼杵の壁面への摩擦を最小限にし,スティッキングなどの打錠障害を防ぐために添加されます。滑沢剤は錠剤表面では機能する必要がありますが,打錠工程においては,まさしくその逆で,粉末が接着する必要があるため“非接着性”と”接着性”の両方が必要となります。ステアリン酸マグネシウムに代表されるように,滑沢剤を使用する際には,それ自身が有する疎水性の特性を考慮する必要があります。過剰に添加することで,もろく軟らかい錠剤となってしまうだけでなく,フィルムコーティングの接着性を低下させ,崩壊速度の遅延にもつながります。
部分アルファ化デンプン(淀粉1500®)のような塑性変形性を有する添加剤及び/又はそれ自身が滑沢剤の役割も果たす添加剤を錠剤処方に選択することは,錠剤化を容易にするために必要である滑沢剤の量を大幅に減らすことを可能にします。
ヒント2:コティング剤の処方検討
コティング剤の処方は,どれも同じ組成ではありません。フィルムコティング剤に含まれる各原料が,錠剤への接着性に大きく影響します。ワックス状もしくは,もろく強度の弱い錠剤やロゴにより凹凸のある錠剤を扱う場合には,特にコーティング剤の原料の選択が重要になってきます。最近のフィルムコーティング技術の進歩(ポリビニルアルコール(PVA)やPVA-PEGグラフトコポリマーのような新規のポリマーの使用)により,ワックス状の錠剤に対してもフィルムの接着性が大幅に向上され,ピーリングやロゴブリッジングだけではなく,エッジ部分が欠けてしまうような不具合も防ぐことができます。
慎重に検討を行い,適切なフィルムコーティング処方を選択することで,これらの問題は最初から防ぐことが可能です。
コティング剤は,すべてのスケルに対して最適であるとは限りません。滑りやすいワックス状の錠剤を,従来のhpmcベスの処方でコティングしました(左)。こらはフィルムの錠剤への接着性が不十分であるために,ロゴブリッジングを起こしています。同様の錠剤にPVAベースのOpadry IIを用いてコーティングをした場合(右)はPVAの優れた接着性によりロゴはくっきりと現れて,鮮明な仕上がりとなりました。
カラコンでは研究開発の早い段階から,ご連絡いただくことをお勧め致します。それにより,悩みは解消され,お客さまの錠剤に対して最適なコーティング剤を選択することが可能になります。
ヒント3:コン
コーティング剤の処方に加えて,ロゴのデザイン及び配置を考慮することは,コーティングの仕上がりにとって重要となります。打錠機の金型は,コティングを念頭に置いて設計する必要があります。多くの打錠機メーカーは,鋭く狭い角度の刻印とは対照的に,緩やかな角度,広く浅い角度にしなければならないと既に理解しています。適切にロゴをデザインすることにより,コーティングを行っても,ロゴの鮮明さと読みやすさを実現することができます。
ヒント4:実現したいオプションは初期段階より検討する
私たちは多くの経験の中で,素錠やコーティング剤の処方変更は,開発の終盤になるにつれて選択肢として考えられない,という状況に直面してきました。このような状況では,変更することができるのは,わずかなプロセスの調整だけになります。プロセスの変更により,ロゴブリッジングのような問題は解消されることもありますが,その製剤自体が有する接着性に関する問題を,根本から解消することにはならないのです。
例えば,滑りやすいワックス状の錠剤へのフィルムコーティング剤の選択が,不適切であった場合,フィルム強度を下げてロゴブリッジングを防ぐよう,プロセスの変更をすることもできますが,結果フィルムは弱く,仕上がりも粗くなり,時にはバッチの不良を引き起こすこともあります。これが唯一の解決策である場合もありますが,初期段階での検討により,開発の進行を遅らせるような問題や製造条件の検討を,結果的に避けられることにもなるのです。ですから,私たは開発の初期段階より,カラコンの専門家へのコンタクトをお勧めしております。
カラコンでは,全ての錠剤がいつでも完璧な仕上がりとなるよう,お客様のサポートすることを目標としております。最適なフィルムコーティングを施すためには,開発の初期段階よりご相談いただき,処方,コーティング及び製造工程のプロセスで起こり得る問題を,直接理解することが最良な方法となります。